2010年10月27日水曜日

貨幣デノミ措置は「資本主義のしっぽ切り」か

  権力継承問題が表面化しつつある北朝鮮では、昨年11月30日に突然の貨幣デノミ措置が発表 され、世間の注目を浴びている。核開発問題や権力継承問題など国際社会に大きな影響を与え得る問題に比べると、今度の措置は基本的に国内経済問題または政 治問題に過ぎないが、政権の安定と経済の安定は近隣国としては見過ごせない問題。その意図は何なのか、その影響で経済実態および住民の生活状況はどうなっ ているのか、など諸問題が浮かび上がる。
『朝鮮新報』(在日朝鮮総連機関誌)の報道によると、今度の新貨幣発行は1992年以来の17年ぶり。 5,000ウォンから1銭まで14種類の新貨幣を発行し、住民は100対1の比率で短期間に手持ちのお金を新貨幣と交換しなければならない。当局の説明に よれば、その目的は「貨幣の流通を円滑に行い、誠実に働く勤労者を優遇すること」だという。
政府当局は2002年に「7・1経済管理改善措置」を 発表し、物価・賃金の改革を行い、勤労者の給料を30~50倍引き上げた。ところが、食糧や生活必需品の国による配給がかなり減少し、住民は自由市場(い ちば)にてそれを購入せざるを得なくなった。供給不足の経済のなかで、「計画経済」でも「市場経済」でもない「無秩序」な「市場(いちば)経済」により (筆者の定義)、物価は国定価格の50倍から100倍以上に上昇し、深刻なインフレが住民生活に打撃を与えた。
一方、市場(いちば)での自由な取 引が認められるなかで、貧富格差が急速に拡大し、商売人達が困窮した国民経済のなかで富を集めたが、今度の措置では貨幣交換の上限金額を設け、成金になっ た人々は手元の貨幣が紙屑になってしまう。「貨幣の流通を円滑にする」措置とは言うものの、経済と住民生活の混乱を招くことは想像に難しくない。
前世紀90年代初頭には「羅津・先鋒自由経済貿易地帯」を創設し、経済関連の諸法規を改正し、その後は物価・賃金改革を行い、一見市場経済を導入する方向で動くように見えた政策方向は、ここに来て金持ちと市場に対する取締りを強化し、逆方向に向かうように見られる。
北陸中日新聞2010年4月12日に掲載

0 件のコメント:

コメントを投稿