2010年10月27日水曜日

「コリアン」と「東北アジア共同の家」

  北陸大学教授 李鋼哲

 朝鮮半島から中国・日本や米国・ロシアなどに移住したいわゆる「在外同胞」は約700百万人と言われ、半島人口の約一割が外国に移住して暮らしている。世界で最も注目される華僑・華人が4~5千万人と言われているが、中国大陸の13億の人口比では3%程度に過ぎない。清帝国の衰退で近代には中国が西欧列強の餌食になり、大量の移民を作り出したが、朝鮮半島の人々は長い歴史のなかで、周辺国の侵略を受けたり支配を受けたりする中でし移民が大量になってしまった。
終戦後、朝鮮半島に分断国家ができ、朝鮮戦争と終戦でそれが60年間も続く中、移住民は増える一方だった。彼らは移住した国が違うため移住民たちの呼び名もバラエティで、「朝鮮族」(中国)、「在日韓国・朝鮮人」(日本)、「コリョイン」(ロシア)、「コリアン・アメリカン」(米国)などがある。日本だけで見ても、「在日朝鮮人」、「在日韓国人」、「ニュー・カマー」、それに「中国朝鮮族」など多様である。
歴史的な南北首脳会談が実現した2000年以降、日本では「コリアン」という用語で南北出身を問わず統一しようとする動きが出た。大阪に最近「コリア国際学園」(KIS)も設立されることになり、「境界を跨ぐ越境人」養成を目指している。「ワン・コリア・フェスティバル」というNGO団体も設立され活発な統一運動を展開している。言葉だけでは南北および海外のコリアンを統合できるとは言えないが、少なくとも共通のアイデンティティを確立するには共通の用語が必要不可欠。
戦争と対立の時代において、「コリアン」は時代に翻弄され、自分のアイデンティティすら確立できずに生存してきたが、冷戦後の平和と共生の時代においては、国境の壁が低くなり、情報化社会になると、多言語・多文化を受容する能力に優れた「コリアン」の役割が浮上してきた。「コリアン」たちが力を合わせ、日本を含む「東北アジア共同の家」造りを推進することができるのであれば、そのパワーは無限大になるに違いない。
 
『朝鮮商工新聞』コラム2010年8月15日版に掲載

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